海外の敷金・保証金
敷金・保証金は、欧米では「デポジット」といいます。敷金の目的は、家賃の債務不履行の保全が目的です。民主主義国家で、キリスト教が思考の基礎にあるビジネスパースンは「フェア」が基準です。
賃貸借契約のスタンダードは、定期建物賃貸借契約(期日に定めのある)です。
貸主も借主にとり事業をオペレーションする「場」ワークプレイスなので、双方共に事業としての収益を最優先します。定借ですから、中途解約不可であり、リスク回避として借主自ら転貸借(サブリース)の承諾を契約書に記します。
アメリカ会計基準「US-GAAP」、国際会計基準「IFRS」もデポジットは現金預金として計上されます。敷金返還で利息もつかない、現金預金なのに拘束され使う事もできない、まず理解できないでしょう。
債務不履行の保全としては、L/C(Letter of Credit:信用状)で対応します。契約自由の原則のお国柄とはいえ、貸主・借主共にリアルエステートライセンスの専門家同士で詳細を詰めていきます。弁護士が委任され話し合いする事も多いです。連帯保証人、敷金の償却とか双方代理も違法です。
実は我が国も、住宅では敷金ゼロ、仲介手数料ゼロ、更新料、償却もゼロ、原状回復も特別損耗以外借主負担ゼロ、が多くなりました。連帯保証人の対策として家賃保証会社を使っています。グローバリゼーションの現在、国際的スタンダードの賃貸契約「agreement」に向かうと思われます。
敷金・保証金の違いとは?
敷金・保証金は、民法上で違いについて明確な定義はありません。
一般的に関西では、保証金という契約書が多いです。関東では、一般的に敷金と記されているケースが多いようです。
保証金は、店舗付き事業を始める「出店の権利金」という意味もあります。いずれにしても管理費も敷金、保証金の償却も賃借人からみれば、すべて実質賃料と言えるでしょう。土地建物の流動化、証券化された賃貸物件「アメリカンスタイル」は、ほとんど賃料に管理費も含まれており、10,000円 /㎡ というように明確です。
日本の賃料物件のリーシングスタイルは、敷金が一律賃料の10カ月などが多いですが、
国外では、 アメリカ、ヨーロッパでは賃借人の信用評価をふまえたうえで賃貸人、賃借人はそれぞれ「リアルエステートライセンス保持の専門家」と呼ばれるエキスパートに委任し、条件協議するのが一般的です。
国内でも外資のBBC英国放送の場合、賃貸借契約では敷金はなし、サブリース承諾を認めていただき、キー局が所有する大型ビルの賃貸借契約が成立しました。再々協議しましたが、原状回復と指定業者については前例がないビルの運営ルールにより不可という理由により削除していただけませんでした。
平成29年5月26日「民法の一部を改正する法律案が可決」され、サブリース、原状回復についてもさらに明確になりました。
【改正法】新設
第4款 敷金
第622条の2 賃貸人は、敷金(いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。以下この条において同じ。)を受け取っている場合において、次に掲げるときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。
一 賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき。
二 賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき。
2 賃貸人は、賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができる。この場合において、賃借人は、賃貸人に対し、敷金をその債務の弁済に充てることを請求することができない。
民法改正(2020年)第622条の2(敷金)
さらに、「敷金」については上記 により明確となりました。
ちなみに「敷引き」の語源は江戸中期、江戸時代の嫁入りの持参金という説があります。跡継ぎができないなどの理由で離縁された場合、敷金が返還され、身の振り方に余裕ができたと言います。それを「敷引き」と言っていたようです。
また愛知県は、松平後の徳川家康公生誕の地です。花嫁準備金が高額につくのも持参金が多額になるのもわかるような気がします。
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