人気の渋谷オフィス、原状回復工事をB工事C工事にわけて506万円削減 敷金は4,290万円預託
昨今、オーナーチェンジが頻繁に行われています。国際都市東京の渋谷は、世界の不動産投資家から人気を集めるエリアです。コロナ禍でも渋谷の人気は衰えず、家賃も微増しています。
オーナーチェンジの際、問題の多い事項が「原状が分からない」です。その原因は、不動産も金融商品であるので、テナントから選ばれるビルにするため改修工事を繰り返すことにより竣工時と現状が違う、ということで起こります。この問題をクリアするためには、貸主と借主が「原状」を確定して共有することが大切です。
賃借人の概要
賃借人(クライアント) | シーサー株式会社 |
物件名称 | AP渋谷金王 |
賃借面積 | 7階:131.33坪/434.15㎡ 、8階:33.99坪/112.37㎡ 合計 165.32坪/546.52㎡ |
賃貸人の概要
賃貸人 | 大手不動産デベロッパーT 不動産 |
指定業者 | 系列子会社の株式会社T・デザイン |
原状回復実績
原状回復初回見積 | 1,661万円(査定額1,045万円〜1,155万円) |
再見積 | 1,320万円 |
合意見積 | 1,100万円(B工事935万円+C工事165万円) |
削減額 | 561万円 |
削減率 | 34% |
敷金(預託金) | 4,290万円 |
敷金返還額 | 3,190万円(原状回復工事費を敷金より差引く) |
(※総額表示)
借主が取り付けた建築設備も新規取替えの見積もりに不信感
オフィス移転をすることになった賃借人は、指定業者から出された1,661万円という見積り金額に不信を抱きました。賃借人が自社で取り付けたブラインドが“原状回復(入居時の状態に戻す)”に入っており、「ブラインドは借主の資産なのに?何で新品に交換するの?」というシンプルな疑問でした。
しかし、金額交渉をしようにもオフィス移転や原状回復における交渉はどのようにすればいいのか分からなかったため、入居時にお世話になったプロジェクトマネージャーへ相談したところ、原状回復・B工事査定会社であるRCAA協会を紹介してもらい、本件の協議は協会会員である株式会社スリーエー・コーポレーション(3AC)が査定から協議合意まで行うことになりました。(担当リーダー:3AC山田貴人)
原状確定のため管理会社へ要求、大幅な減額が実現
ブラインドに関しては、入居時に付いていたものではないので、「退去時に賃借人が新規交換」を原状回復工事より削除しました。しかし本件における問題点は、当時の状況(原状)を確認できる書類がないということです。賃貸人は、数回オーナーチェンジされており、竣工図書から数回改修工事により変更されていました。
賃借人と管理会社が面談で協議を行い、3ACは技術助言者という立場で同席しました。このときに3ACは、以下の3つの論点を管理会社へ提出しました。
新規照明器具LED
LEDベースライトは借主貸主どちらの資産なのか?
実質、照明はグレードアップなのでLEDベースライトを有効活用して原状回復見積より削除。
パッシブセンサーは図書に記されていない?
見積もりで脱着が算定されているが、原状回復特約に明文化されていない。管理会社が提出した仕上表は、契約締結後借主の承諾なく作成された書類などで法務根拠がない。
民法改正第621条「原状回復の定義範囲工事内容の明文化」を考察すると法務根拠はない。
ブラインド、間仕切りは他資産区分でB工事C工事を明確にする
賃借人の資産についての工事は、賃借人指定の業者で工事を要求(該当箇所はB工事ではなくC工事としてほしい)。
協議によって、行わなくてよい工事が明確になり、それについてはB工事から除外してもらいました。また、上記「ブラインド、間仕切り」は、賃借人推薦業者を使うことも受け入れられました。その結果、合意見積は1,100万円(B工事:935万円、C工事165万円)となりました。561万円(34%)の削減です。
シーサー株式会社からいただいたコメント
短期間の協議であり、しかもビル側は有名なT不動産グループにも関わらず、予想以上に減額していただき感謝しております。シーサーは沖縄の魔除け守り神です。本件は3ACさんがシーサーをやってくれました。
(シーサー株式会社 担当者 小澤 貴紀 様)
オーナーチェンジなどによって“原状”が不明瞭であっても、オフィス移転時の原状回復工事費・B工事費を減額させることは十分可能です。
原状回復・B工事査定承ります。全ては査定書(エビデンス)が決め手です。