規模の大きなオフィスの移転では、原状回復工事費用も巨額になる。ただ、それだけに適正化による減額幅も大きくできる。
今回の事例は、B工事をC工事にすることや、各工事を適正化することで千万単位の額の減額を実現している。
概要
物件名 | K第七ビル東京都港区高輪4丁目10番8号 |
賃貸人 | K電鉄株式会社 |
賃借人(クライアント) | テクマトリックス株式会社 |
PM管理会社 | 株式会社Kビルマネジメント |
用途 | 2階・3階 オフィス(事務所) |
面積 | 3,115.84㎡ / 942.54坪 |
解約日 | 2015年5月31日 |
見積額が予算を大幅にオーバー
賃借人はオフィスを統合拡張するため、オフィス移転することになり原状回復の見積もりを賃貸人側へ依頼した。賃借人は事前に退去移転予算を組んでいたが、届いた原状回復工事金額の見積もりは大幅にこれをオーバーするもので、賃借人はただちにRCAA協会会員のスリーエー・コーポレーション(3AC)に査定を依頼した。
賃借人・賃貸人間で協議が開始されると、賃貸人側の建設会社はすべての二次請け業者と減額協議は不可能であると主張し、「建築内装」「電気設備」「空調換気設備」「衛生スプリンクラー」「パーテイション」と、工事項目ごとに別々に見積もりを出すことになった。この時の各工事項目の合計金額は税別で7500万円であった。
本件の原状回復工事ではいくつか問題点があるものの、特に大きなものがあった。それは、どこの建物でも言えることだが、電気、空調換気、衛生スプリンクラーは高額になりがちということだ。これらの工事では施工要員の余剰計上や過剰な仮設などが目立った。
3ACでは、各社(二次請け業者)毎に協議を行っていった。
大幅な減額を実現できた理由

本件の結果は以下の通りである。
・「建築内装工事」は賃借人側の推薦業者で行う(B工事ではなくC工事とする)。
・そのほかの工事については、3ACによる査定結果の金額で発注する。
・3ACが各B工事、C工事会社の取りまとめ推進役として内装監理室的な業務を行う。
これによって、滞りなく原状回復工事を進めていくことが出来、しかも当初よりもローコストで原状回復工事をすることが可能となった。
各工事の見積金額と発注金額、そして差額を以下の表にまとめた。
工事項目 | 指定業者見積金額 | 発注金額 | 差額 |
建築内装 | 36,593,007円 | 33,500,000円 | 3,093,007円 |
電気設備 | 14,412,000円 | 10,500,000円 | 3,912,000円 |
空調換気設備 | 11,140,270円 | 8,000,000円 | 3,140,270円 |
衛生スプリンクラー | 4,832,050円 | 3,200,000円 | 1,632,050円 |
⑤ パーテイション | 6,000,000円 | 3,700,000円 | 2,300,000円 |
経費 | 5,358,186円 | ①~⑤内に含む | |
値引き | -3,335,513円 | 0円 | |
合 計 | 75,000,000円 | 50,400,000円 | 24,600,000円 |
32.8%の減額 |
当初の見積金額(7500万円)から32.8%減額し、5040万円で原状回復工事を行うことができたわけである。
テクマトリックスからいただいたコメント
3ACのメンバーは、以前、建築内装を作りテナントの入居などの業務をしていたと聞いています。そして、退去に伴う建築や不動産に関するトラブルが多いことを解消すべく、退去時の原状回復やB工事、また入居の際のB工事のコンサルとして専門化した企業と伺いました。
今回、弊社の案件をお手伝いいただき、その実力を目の前で拝見させていただきました。内装監理室のプロフェッショナルメンバーにより、総合監理監修(内装監理室)として、金額・工程・仕様・工事区分・品質などの調整監理を行い、32.8%の減額と工事完了検査~解約明渡しまで行っていただきました。本当に素晴らしい業務を行っていると感服しました。
(担当役員)

本件では、B工事で高額になりがちな部分を合理的な査定価格に減額させたほか、建築内装に関してはB工事からC工事にすることで大幅な減額を実現させた。これが原状回復の専門家がコンサルする効果である。
原状回復は工事業者が二次請け、三次請けになることも珍しくなく、重層構造が問題になっている。本件のように各業者と協議するとなると、自社で対処するには一般の業務にも支障を来すだろう。速やかなオフィス移転を実現するためにも、ぜひ早めに専門家へ相談してほしい。